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『N邸 砂漆喰パターン仕上げ』

知人が新築する自邸の内壁の仕上げを行いました。
通常、新築を行う際には、工務店が内装の左官業者まで選定を行うのですが、今回は施主様が私の知り合いという事もあって「壁塗りは小宮左官指定」という形でお仕事を受けました。

施主様のご希望で、各部屋にはアクセントとなるカラーウォールを作ることになりました。
上の写真では、正面左手の壁がうす黄色のやさしい色味に仕上げています。その他の壁・天井はオフホワイトとし、カラーウォールを引き立てる役目をしています。

天井に限らず、壁はすべて手塗りの味わいを残したパターン仕上げとなっています。
気温や下地の材質、漆喰の配合などで乾いて固まる時間が変化しますので、限られた時間の中でパターンを上手く仕上げていく事が左官仕事の醍醐味であり、職人の個性となる部分です。

玄関付近においては、パステルのパープルを思わせる色味とオフホワイトの組み合わせでやさしい空間が出来上がりました。日光の反射が壁に投影されることで、空間の立体感や壁の表情が浮き上がって見えてきます。

特に階段室では、細かな面が多いことに加え、複雑な起伏をしていますので、パターン仕上げの出来栄えが良く見える場所です。

今回のお宅では、らせん状の階段が美しく、壁には照明が設置されているので、砂漆喰の表情が照らされて特に美しい空間となっています。

子供部屋は広い壁の面をうすピンクにしているため、お部屋全体が特に柔らかな印象で仕上がっています。まさにアクセントとして、しっかりと機能しているカラーウォールです。

ちなみに色の選定については、
1.まず施主様のご希望・イメージをお伺いする。(この時、イメージに近いインテリア雑誌の切り抜きをお持ちいただいて、打ち合わせすることもよくあります)
2.事前に、近い色味に調合した漆喰のテストピースを制作する。
3.テストピースを基に、施主様と最終の色味を決定する。
という流れで進行いたしました。

まだ目の前に存在しない広い壁の色を決めるという事は、簡単ではありませんが、テストピースを活用するなどして、なるべく仕上がりイメージを持っていただきやすい様にしています。

壁のエッジ部分は、特にパターン仕上げの特徴が見えやすい部分です。
パターンの凸凹を潰さないよう、かつ、手に触れてもやさしい丸みを生み出すように心がけて塗りました。

窓枠近くの細い面、小さな面においても、コテを使い分けながら同じような丁寧さを心掛けています。

施主様のカラーウォールへのこだわりは、トイレにも反映されています。
グリーンを選ばれたことで、他の部屋とは違った爽やかさが演出できました。

最後は、もう一度階段室をご紹介したいと思います。

それぞれ階段の途中には、小窓が設けてあるため、光がパターン仕上げの壁に反射してとても柔らかな光となって回り込んできています。

壁のエッジ部分も、他の部屋と同じく、パターンを潰さないように、そして、手にやさしく仕上げてあります。ピンと緊張感のある角とは違って、微妙な揺れのある直線が生まれています。

今回のお宅では、内部空間の大部分をパターンのある砂漆喰で仕上げたことで、統一感もありながら、カラーやコテ波の大小による表情の違いが、お部屋の個性となっています。

お宅を新築なさる場合だけでなく、建て売りの住宅においても、毎日目にする壁や天井に手仕事の風合いを取り込むと、ぐっと印象が変化しますので、チャレンジしてみるのも良いと思います。